スマートフォンをビジネスフォンの内線電話機として接続することができます。
固定内線電話機と従来の携帯電話を、スマートフォン1台に集約して運用することも可能です。
- 固定内線電話機 + 携帯電話 = スマートフォン
SIP と ビジネスフォン と スマートフォン を組み合わせることで、スマートフォンをビジネスフォンの内線電話機として活用できるようになります。
【1】ビジネスフォンにどうやってスマートフォンを接続するの?
スマートフォンは、無線LANを経由して、ビジネスフォンにWi-Fi接続する形になります。
スマートフォンは、従来のフィーチャーフォンとは違い、標準で無線LAN端末としての機能が実装されています。
スマートフォンで対応している無線LANの規格については、次の通りです。
無線LANの規格 | 周波数帯 | 最高通信速度 |
IEEE 802.11ac | 5 GHz | 6.9 Gbps |
IEEE 802.11n | 2.4 GHz | 600 Mbps |
5 GHz | 600 Mbps | |
IEEE 802.11a | 5 GHz | 54 Mbps |
IEEE 802.11g | 2.4 GHz | 54 Mbps |
IEEE 802.11b | 2.4 GHz | 11 Mbps |
IPネットワーク上の無線LANアクセスポイントからWi-fi接続
スマートフォンを内線として使うためには、ビジネスフォンと同一のネットワーク上に接続された、無線LANアクセスポイントから、Wi-Fi接続できる状態にする必要があります。
【2】SIPサーバとSIPクライアントが必要
スマートフォンをビジネスフォンに接続して、内線電話機として利用するためには、SIPサーバ と SIPクライアント が必要となります。
SIP(Session Initiation Protocol)は通称「シップ」と呼ばれており、この SIP と呼ばれるプロトコルを使用することで、電話番号とIPアドレスを関連付けを行い、ネットワーク上での音声通話を実現します。
SIPサーバ は、これらの制御を行うために必要となります。
SIPクライアント は SIPサーバ の配下で動作する端末のことで、このSIPクライアントの一つとしてスマートフォンを接続します。
SIPサーバ が SIPクライアント を制御
ビジネスフォン主装置が内線を制御するように、SIPサーバ が SIPクライアント を制御します。
【3】ビジネスフォン主装置 が SIPサーバ機能 を実装している場合の構成
ビジネスフォン主装置 が SIPサーバ機能 を実装している場合は、別途SIPサーバを用意する必要がありません。
SIPサーバ機能は、古いビジネスフォンの機種には実装されていない
SIPサーバ機能 は、全てのビジネスフォンが実装しているというわけではありません。
古いビジネスフォン主装置には、まず実装されていません。
また、実装されていても、実際に正常に動作するかどうかは、事前に検証が必要です。
【4】ビジネスフォン主装置 が SIPサーバ機能 を実装していない場合の構成
ビジネスフォン主装置がSIPサーバ機能を実装していいない場合は、別途SIPサーバを設置する必要があります。
ビジネスフォン主装置とSIPサーバ間は、一般内線もしくはBRI接続 (INS内線、ISDN内線) での接続になります。
ビジネスフォン に、外部の SIPサーバ を接続
ビジネスフォンにSIPサーバ機能が実装されていない場合は、別途SIPサーバをビジネスフォンの配下に接続することで、スマートフォンを内線として使用することができます。
ビジネスフォンと接続する方法は、一般内線もしくはBRI接続(INS内線、ISDN内線)となるので、ビジネスフォン側にそれぞれに対応したユニットが必要となります。
【5】スマートフォンにはSIPクライアント機能が必要
内線として使用するスマートフォンには、SIPクライアント機能が必要となります。
SIPクライアント機能は、スマートフォン に SIPクライアントのアプリ をインストールすることで実装させることができます。
数多くのSIPクライアントソフトがあります
スマートフォンにインストールする SIPクライアントのアプリ は、ビジネスフォンに専用で用意されているアプリが推奨されていますが、一般的に流通しているSIPクライアントソフトでも動作可能な場合があります。
有料、無料、アクティベーションが必要なもの、別途オプション機能の購入が必要なもの、等数多くのSIPクライアントソフトが存在します。
またSIPクライントソフトにより、音声の品質に大きく違いがでることもあります。
加えてスマートフォンの機種も多岐に渡るので、実際に導入する環境と同じ条件での動作検証が行われているソフトでの運用をおすすめします。
【6】QoS対応の無線LANアクセスポイントが必須
ビジネスフォンとスマートフォン間は、無線LANアクセスポイントからのWi-Fi接続となります。
音声通話は通常のデータ通信と違い、リアルタイム性が強く要求されます。
このリアルタイム性が損なわれると、音声の遅延やゆらぎが大きくなり、まともな通話ができなくなります。
QoS で音声通話のデータ通信の優先順位を高くする
QoSに対応していれば、音声通話に関するデータの帯域を一定以上確保し、且つ、他のデータよりも優先して、通信を行うように制御することが可能になります。
このQoSが、通話品質を確保する上での、重要なポイントの1つとなります。
【7】スマートフォン内線の動作概要
スマートフォン内線の動作は、SIPサーバ と SIPクライアントソフト の機能に大きく左右されます。
ビジネスフォンメーカーが独自に開発したSIPクライアントソフトであれば、よりビジネスフォンに近いサービス機能を提供されているケースもありますが、基本的には一般電話機の内線やPHS子機と同じような操作になります。
固定内線電話機 (多機能電話機や一般電話機など) からスマートフォン内線を呼び出します。
SIPクライアントソフトによっては、正常に着信鳴動しないことがあります。
- バイブのみで着信音は鳴らない
- 1回だけバイブ動作後、あとは動作なし
スマートフォン内線から固定内線電話機(多機能電話機や一般電話機)を呼び出します。
スマートフォン内線から外線発信をすることができます。(外線発信特番+電話番号をダイヤル)
スマートフォン内線に外線着信させることができます。
SIPクライアントソフトによっては正常に着信鳴動しないことがあります。(バイブのみ、最初の1回のみバイブ、等)
スマートフォン内線で通話中の通話を個別保留(自己保留)することができます。
SIPクライアントソフトによっては保留操作ができなかったり、保留しても相手に保留音が流ない(無音)場合があります。
スマートフォン内線で通話中の通話をパーク保留することができます。
SIPクライアントソフトによってはパーク保留操作ができないこともあります。
スマートフォン内線で通話を別の内線に転送することができます。
SIPクライアントソフトによっては転送機能を利用できないこともあります。
SIPサーバ側でREFER機能(別のURIへ通話を転送する機能)に対応している必要があるからです。
スマートフォン内線で複数の内線や外線と会議通話をすることができます。
SIPクライアントソフトによっては会議通話を利用できないこともあります。
近くの内線電話機の内線着信にスマートフォン内線でかわりに応答(代理応答)することができます。
【8】4G/LTEからでも、インターネットVPN経由で内線が使えるが・・・
4G/LTE からインターネットVPNを経由して、社内のビジネスフォンと同じネットワークにアクセスが可能な環境であれば、外出先でもスマートフォンを内線として使用することができます。
ただし、4G/LTE はWi-Fi環境よりも通信速度が落ちるので、使用に耐えうる通話品質を保つのは困難な場合が多いです。
外出先と社内ネットワークをVPNで接続します
外出先 (4G/LTE) と社内ネットワーク間は、VPNを利用して接続を行います。
社内ネットワークにさえアクセスできれば、スマートフォンを内線として利用することが可能です。
【9】SIPクライアントソフト はバッテリーの消耗が激しい
スマートフォンを内線として使用するためには、SIPクライアントソフト をバックグラウンドで動作させておく必要があります。
SIPクライアントソフトは通常のアプリと異なり、バッテリーの消耗が激しいので、半日程度でバッテリーが空になってしまうこともあります。
充電器とモバイルバッテリーでカバー
事務所にいるときは、充電器で充電しながら待ち受けることもできるでしょうが、外出先では充電器での充電が、なかなかできません。
スマートフォンを内線として、1日中フルに活用したいとお考えなら、別途モバイルバッテリーを導入されることをおすすめします。
あとはメーカー側での、ソフトの改善を期待しましょう。
最後に
スマートフォンを内線として活用することのメリット、デメリットはありますが、現状ではまだまだ様子見といった部分が強いかもしません。
SIPクライアントソフトの作り込み、スマートフォンのバッテリー消耗の改善が進めば、スマートフォンを無理なく、内線として活用できる環境を構築できることでしょう。
最後までご覧いただきましてありがとうございます。