営業など外出が多い職場においては、自社や取引先との連絡に携帯電話が欠かせません。
このため、業務用携帯電話を貸与する場合も多いでしょう。
業務用携帯電話のルールを作ることは大切ですが、実効性のあるルールでなければ意味がありません。
ここでは守りやすくて効果のある利用ルールを作成するために、押さえておきたいポイントを解説します。
まず、携帯電話を使う目的をはっきりさせる
業務用携帯電話の利用ルールを作成する目的は、
- 業務を効果的に進めること
- トラブルなく携帯電話を業務に利用すること
にあります。
このため、業務に支障がある利用ルールは無意味どころか有害です。
業績アップのためのルール作りということを忘れてはいけません。
携帯電話を使う目的をリストアップする
携帯電話を使う目的をはっきりさせるためには、業務においてどのような目的で携帯電話が使われているか、または使われうるのかをリストアップする必要があります。
例えば、以下のような目的が考えられるでしょう。
- 自社の従業員(上司や部下、同僚)への連絡
- 取引先等への連絡
- 設備やイベント実施状況、商品などの撮影
- 業務用アプリの利用
それぞれの職場において、携帯電話に求められる機能は異なります。
例えば取引先に頻繁に出入りする営業マンの場合は、企業秘密を持ち出す嫌疑を掛けられないためにも、カメラのない携帯電話を与えることがベストという場合もあります。
その一方、設備管理の職場では突然のトラブルに備えてカメラ付きの携帯電話を持たせ、いつでも現場を撮影できる体制を整える必要があります。
私物の携帯電話は業務に使わせない
職場によっては通信費を節約するため、従業員に業務用携帯電話を持たせず、私用の携帯電話を使わせている場合があります。
これは本来会社が負担すべき通信費を従業員に払わせているという点で問題であることはもちろん、セキュリティ保持の観点からも問題があります。
私物の携帯電話やスマートフォンは、機能が豊富であることが多いものです。
例えば社内や取引先のオフィスを勝手に撮影されたらどうなるでしょうか。
もしインターネットにアップロードされたら、機密情報の拡散を防ぐ手立てはありません。
また私物のスマートフォンにウィルスが感染していた場合、職場宛てにメールを送るとウィルスまで添付されてしまい、社内にウィルスが広がる原因ともなります。
このため、仕事で使う携帯電話は業務用のものに限定するようにしましょう。
どの電話機を貸与するかを検討する
携帯電話を使う目的が決まれば、どの種類の電話機を貸与すれば良いかも決まります。
通話が目的か、それともアプリも使うのかによって、選択は異なります。
通話が目的なら、シンプルな機能の携帯電話がベスト
外回りの営業マンなどは、携帯電話の利用目的がほぼ通話のみであり、それ以外の機能は使わない方も多いでしょう。
このような場合は、できるだけシンプルな機能の携帯電話を貸与すると良いでしょう。
カメラやワンセグといった機能も無いことがベストです。
チャットやアプリの利用がメインならば、スマートフォンを選択
大きな病院など、職場によっては業務でチャットやアプリを使う場合があります。
このような場合は、スマートフォンを選択することになるでしょう。
必要な機能以外は使わせない
可能であれば、必要な機能以外は使わないようにルールで決めておくだけでなく、機能制限をしておくことも有効です。
例えばスマートフォンの場合は、アイキューブドシステムズが提供する「CLOMO」シリーズの利用により、アプリケーションのインストールや利用を制限することができます。
また管理者から強制的にアプリのインストールをさせることも可能です。
業務用携帯電話のルールを作成する際のポイント
業務用携帯電話のルールを作成する際には、押さえておくべきポイントがいくつかあります。
これらは実効性のあるルールにするために必要なことですから、必ずチェックしておきましょう。
私用での利用は厳禁
言うまでもないことですが、業務用携帯電話を私用に使うことは厳禁です。
それは会社のお金を私物化したことと同じことになるからです。
但し、ルールにはきちんと明記しておきましょう。
明記をすることで、人により解釈が異なるといった事態が避けられます。
「私用に使わないようにといったことがルールには無いのでOK」といった屁理屈に対しても、ルール違反の一言で対応できます。
アプリのインストールは管理者が行うことがベスト
可能であれば、アプリのインストールは利用者任せにせず、管理者が行うことがベストです。
管理者が行うことによって、電話機によってアプリのバージョンが異なるといった事態を回避することができます。
さきに説明した「CLOMO」など、一斉かつ強制的にアプリをインストールするシステムを導入すれば、管理者の手間が大幅に省けます。
このようなシステムの導入も検討するとよいでしょう。
紛失防止対策と、紛失した際の対応方法を明確にする
業務用の携帯電話には、取引先の電話番号や電子メールのやりとりなど、業務上の機密情報がたくさん詰まっています。
このため紛失は機密情報の流出につながりますから、紛失防止対策は必須です。
- 紛失防止対策にはストラップをつける
- 携帯電話にパスワードロックをかける
など、いくつかの方法があります。
但し、多くの対策を取ればそれだけ紛失のリスクが下がるとは限りません。
多くのルールを設ければ、それだけルールを守ることが面倒になります。
ルールはできるだけ少なく、かつ有効な対策を選ぶことが大切です。
また紛失が発生した場合の対応方法についても、あらかじめ決めておく必要があります。
- 報告ルートや届け出先
- 対外的なプレスリリースの発表内容など
ルールとして定めておくといざという時に役立ちます。
故障した場合の対応方法を決めておく
携帯電話も機械ですから、故障する場合があります。
故障したら業務に支障が出る状態となりますから、速やかに対応できるような方法をあらかじめ定めておきましょう。
たとえば管理者が電話機の予備を持っておき、故障した電話機が出たら交換するといった方法が考えられます。
また内蔵電池が交換できる携帯電話の場合は、予備の電池を持っておくという方法も取れるでしょう。
守られるルールにするためには、こんな工夫も必要
せっかくルールを作っても、現場で守られないと意味がありません。
守られるルールを作るためには、以下にあげるような工夫が必要となります。
守りやすいルールにすること
ルールを守ってもらうためには、守りやすいルールであることが大切です。
たとえば、
「業務用スマートフォンに、勝手にアプリをインストールしてはいけません」
というルールであれば、単純かつ明確です。
このため、守られやすいルールといえます。
しかし業務用スマートフォンには「インストールして良いアプリとインストールを禁止するアプリ」があります。
「インストールしたい場合は、その都度確認してください」といったルールは、いちいち確認が必要となりますから守ることが面倒です。
このようなルールは守られにくくなり、ルールを定めていないことと同じことになってしまいます。
ルールを周知し、誰でも知っている状態にすること
ルールは従業員など、業務に従事するすべての人に周知されてはじめて守られるものです。
このためルールは定めておくだけでなく、積極的に周知・徹底する活動が必須です。
常にルールを意識してもらい、誰でも知っている状態にすることが大切です。
特に紛失防止のルールについては、実際にあった紛失事故の事例などを紹介して、利用者に危機感を持ってもらう方法も有効です。
ルールを効果的に運用するためには、日頃のチェックが欠かせない
ルールがきちんと守られ、かつ効果的に運用されるためには、ルールを作った後もチェックをすることが欠かせません。
日頃のチェックには、以下の点に留意するとよいでしょう。
定期的に携帯電話の現物を確認する
貸与した携帯電話の現物を定期的に確認することは大切です。
紛失していないかを確認できることはもちろん、電話機に不具合がないかも確認できます。
将来携帯電話の紛失事故が起きた際、会社の管理責任が問われる場合もあります。
なすべきことをきちんと行っていたということを証明するためにも、現物の確認は必要です。
定期的に利用状況を確認する
業務用携帯電話の利用状況を確認することも大切です。
通話先や通話時間、パケット使用量などを確認することができます。
利用状況の確認は、以下の点を重点的にチェックするとよいでしょう。
- 競合他社など、業務外関係者への機密情報の流出
- 業務用携帯電話の不正利用の疑い
- 禁止アプリをインストールしている可能性がある
携帯電話会社が提供する企業向けのサービスを利用すると便利
NTTドコモやKDDI、ソフトバンクは、企業の担当者が一括して携帯電話の管理をできるサービスを提供しています。
たとえばNTTドコモの場合は、「ご利用料金管理サービス」を提供しています。
このサービスを利用することで、
- 個々の利用者の電話料金や通話先、
- パケット利用量
などを確認できます。
またソフトバンクでは「法人コンシェルサイト」、KDDIでは「KDDIビジネスオンラインサポート」により、携帯電話の一括管理サービスを提供しています。
守りやすいルールを設定し、便利さと安全を両立させよう
業務用携帯電話は仕事を円滑に進めるためのものですから、便利であることが重要です。
しかし一方で機密情報のかたまりでもありますから、ルールを設けて安全を確保することも大切です。
このため業務用携帯電話のルールを決める際には、なるべく便利さを損なわないように工夫することが大切です。
このことが守られるルールにつながり、またセキュリティ事故の防止につながります。
また業務に必要な機能に絞った機器を用意することも1つの方法です。
例えば営業マンに対して、カメラもワンセグも無い携帯電話を用意することがあげられるでしょう。
カメラがなければ、職場や取引先を盗撮する危険性もありません。
携帯電話会社ではNTTドコモなど、月々の利用状況を詳しく分析できるサービスを提供する会社もあります。
積極的にこれらのサービスを活用し、不審な利用がある場合はチェックすることも大切です。
最後までご覧いただきまして、誠にありがとうございます。