アナログ回線はアナログ信号で送受信を行う、最もオーソドックスな電話回線(局線)のことです。
アナログ回線はもっとも信頼できる「ド定番の電話回線」
アナログ回線は、今尚、多くの会社や家庭で使用されている、いわゆる定番の電話回線です。
IP電話に比べて、通話品質も安定しています。
アナログ回線は、電話回線から電話機に対して48Vの電圧を供給するので、普通の一般電話機であれば、別途電源を特に必要としません。
アナログ回線は、局から独自に電力の供給を受けているため、停電していてもアナログ回線だけは使い続けることができます。
そのため、停電時でも使える緊急の電話回線として、アナログ回線は今なお欠かせない電話回線であり続けているのです。
昔はデータ通信でも使用されていた
現在では、音声通話のみを利用することが当たり前になっていますが、ADSLや光ファイバーといったデータ通信に適したサービスが普及するまでは、「音響カプラー」や「ダイヤルアップモデム」を使って、データ通信でも多く使用されていました。
プッシュとダイヤル
電話機のダイヤルボタンを使って、相手先に電話をかけるわけですが、このダイヤルボタンを押したときに送出する信号には、2つの種類があります。
1つはDP信号(ダイヤルパルス信号)、もう1つはPB信号(プッシュボタン信号)です。
アナログ回線は、DP信号(ダイヤルパルス信号)を使用する「ダイヤル回線」と、PB信号(プッシュボタン信号)を使用する「プッシュ回線」の2種類に分かれており、この回線の種類に応じて、電話機から送出する信号を合わせる必要があります。
ダイヤル回線
アナログ回線は、電話機の受話器を上げると「ツー」という発信音が聞こえます。
この発信音が聞こえる状態から、ダイヤルボタンで電話番号をダイヤルすると、「プツプツプツ・・・」というような、発信音が途切れる音が聞こえます。
この「プツプツプツ・・・」という音は、発信音の「ツー」というパルス(信号)を、ダイヤルした数字に応じた回数分だけ瞬断させることによって発生しているのです。
- 「1」をダイヤルしたら、1回瞬断
- 「2」をダイヤルしたら、2回瞬断
- 「0」をダイヤルしたら、10回瞬断
このようにダイヤルした数字に応じて、発信音のパルス(信号)を瞬断させます。
ちなみに、このパルス(信号)を瞬断させることを「パルスを切る」といいます。
この「パルスを切る」動作ですが、切る速度が2種類に分かれています。
- DP10
- DP20
「DP10」よりも「DP20」のほうがパルスを切る間隔が短いので、ダイヤル回線に接続する場合は電話機やビジネスフォン・PBXの設定を「DP20」に設定します。
昔ながらの古ーい「黒電話」(ジーコジーコ・・・とダイヤルを回すタイプ)では「DP10」を使用します。
プッシュ回線
プッシュ回線の場合、電話機の受話器を上げた状態(「ツー」という発信音が聞こえている状態)から、電話機のダイヤルボタンを押すと、「ピポパポ・・・」という音が聞こえます。
通称「プッシュ音」といいます。
このプッシュ音は、押下するダイヤルボタンの位置によって、異なる周波数を送出しているために発生しているのです。
プッシュ信号 | 高群周波数(Hz) | ||||
1209 | 1336 | 1477 | 1633 | ||
低群周波数(Hz) | 697 | 1 | 2 | 3 | A |
770 | 4 | 5 | 6 | B | |
852 | 7 | 8 | 9 | C | |
941 | * | 0 | # | D |
この表のように、高群周波数と低群周波数を合成することによって、各ダイヤルボタンの数字に応じた周波数を作り出しています。
この「プッシュ信号」ですが、実は電話機のダイヤルボタンを押さずに、送出することが可能です。
携帯電話等で、ダイヤルボタン押下時のプッシュ音を、電話機の受話器の送話側(話しかける側)部分に、その音が聞こえるように押し当てる事で、電話機のダイヤルボタンを押さずに、相手の電話番号をダイヤルして発信することができます。
音声ガイダンスの操作でプッシュ信号が必要
例えば、チケット販売やお客様窓口、サポートセンター等に電話をすると「音声ガイダンス」が代わりに受付を行っている場合があります。
電話をかけるのに使用している電話回線が「ダイヤル回線」で、使用している電話機が「プッシュ信号」を送出する機能がない場合、電話の相手先が音声ガイダンスを使用している時などには、ガイダンスに従ってのダイヤル操作ができないことがあります。
音声ガイダンスは「プッシュ信号」を受信することで動作するからです。
この場合、代わりに携帯電話のプッシュ音が聞こえるように、電話機の受話器部分に押し当てることで、音声ガイダンスの操作を行うことが可能になります。(はじめから携帯電話から電話すればいいだけのことですが)
ダイヤル回線とプッシュ回線で基本料金が違う
2004年12月までは「プッシュ回線使用料」として電話基本料金に加えて390円課金されていましたが、料金改定に伴い「ダイヤル回線用」と「プッシュ回線用」で基本料金が2系統に分かれることになりました。
NTT | 3級局 | 2級局 | 1級局 | |
事務用 | プッシュ回線 | 2,750円
(税抜 2,500円) |
2,640円
(税抜 2,400円) |
|
ダイヤル回線 | 2,750円
(税抜 2,500円) |
2,585円
(税抜 2,350円) |
2,530円
(税抜 2,300円) |
|
INS64回線 | 3,883円
(税抜 3,530円) |
|||
住宅用 | プッシュ回線 | 1,870円
(税抜 1,700円) |
1,760円
(税抜 1,600円) |
|
ダイヤル回線 | 1,870円
(税抜 1,700円) |
1,705円
(税抜 1,550円) |
1,595円
(税抜 1,450円) |
|
INS64回線 | 3,058円
(税抜 2,780円) |
- 3級局(40万加入以上~)
- 2級局(5万加入~40万加入未満)
- 1級局(~5万加入未満)
- 上記料金以外に1番号ごとにユニバーサルサービス料3.3円(税抜 3円)が必要
発信専用・着信専用・発着両用
ここまでは、「ダイヤル回線」と「プッシュ回線」の2種類のダイヤル種別について説明してきましたが、発信・着信関連では、3種類に分けることができます。
- 発着両用回線(発信 と 着信 の両方利用可能)
- 発信専用回線(発信 のみ利用可能)
- 着信専用回線(着信 のみ利用可能)
発着両用回線(B/W)
発信も着信も利用可能な回線のことを指します。
特に指定しない限りは、この回線を利用することになります。
書類上では「PB B/W」(ピービーボスウェイ)や「DP B/W」(デーピーボスウェイ)というふうに表記されます。
- PB B/W(プッシュ信号 の 発着両用回線)
- DP B/W(ダイヤル信号 の 発着両用回線)
発信専用回線(OG)
発信しか利用できない回線のことです。
着信は利用できませんが、発着両用回線に比べて、電話加入権が割安になっています。
通常の電話加入権の半額程度です。
書類上では「OG」と表記されます。
着信専用回線(IC)
着信しか利用できない回線の事です。
電話加入権の料金は、発着両用回線「OG」より若干安い程度です。
複数の電話回線で代表組を組む時に、代表の1本目を着信専用回線にすることがあります。
発信で使用できないため、必ず1本は着信用として確保できるためですね。
書類上では「IC」と表記されます。
現在はひかり電話などのIP電話が主流
IPネットワークの普及が進んだ現在では、ひかり電話などのIP電話が主流になっています。
ひかり電話に変更しても、アナログ回線と同じように利用できる
アナログ回線からひかり電話に変更したとしても、今までと同じように利用することが可能です。
VOIPゲートウェイで、アナログ回線と同等の信号を作り出すことで、今までと同じ機器を、今までと同じように使い続けることができます。
最後に
アナログ回線はド定番の電話回線です。
災害時や停電時などでも、絶対に不通にすることができないような環境では、今でもアナログ回線がメインで使用されていることが多いです。
この場合、月額料金の採算性よりも、アナログ回線の重要性のほうを優先します。
逆に、月々の電話料金をすこしでも削減したい場合は、ひかり電話などのIP電話を契約して、VOIPゲートウェイで作り出されたアナログ回線を、引き続き使い続けるケースも多くあります。
いずれにせよ、アナログ回線は今後も使い続けられることでしょう。
最後までご覧いただきまして、ありがとうございます。