INS64回線は、1988年にサービスが開始された、デジタル信号で音声通話サービスを提供する電話回線(局線)のことです。
読み方は「いんすろくよん」です!
INS64回線は、デジタル信号で通信を行う電話回線
一般的に電話回線といえばアナログ回線のことを指します。
名前の通りアナログ回線はアナログ信号で音声通話を行います。
一方、INS64回線は、デジタル信号を使用して通信を行うデジタル回線のことを指します。
デジタル回線は、アナログ回線と比較して、音声通話の品質が高く、ノイズにも強いので安定性が高い回線といえます。
回線自体の品質の高さに加えて、デジタル回線ならではの、付加的な機能が充実しているため、海外に比べて、日本ではより多く普及しているんですよ。
INS64回線は、ISDN回線のひとつ
INS64回線は、ISDNと呼ばれるデジタル回線のひとつになります。
ちなみに「ISDN」とは「Integrated Services Digital Network」(総合ディジタル通信網サービス)の略称のことです。
- Integrated
- Service
- Digital
- Network
「ISDN」の読み方は「あいえすでぃーえぬ」です!
そのまんまです!
日本では「INS」と呼ばれる
「ISDN」は世界共通の規格の名称で、日本でのISDNサービスの一般的な名称は「INS」(Information Network System:高度情報通信システムの略)です。
- Information
- Network
- System
日本は他国に比べてこのINS64回線の普及が進んでおり、多くの会社で利用されています。
「INS回線」といえば、たいていINS64回線のことを指すことが多いです。
INS64回線は「2B+D」のチャネル構成
INS64回線は、1回線につき2通話分(2ch分)の通話路を持っています。
通話本数の多い会社などでは、アナログ回線ではなく、INS64回線を使用することが多く、どちらかというと、一般家庭よりも会社での普及率が高い電話回線である、といえます。
そもそも一般家庭で同時2通話いりませんしね
INS64回線1本のほうが、アナログ回線2本より安い
INS64回線は、1本の回線で同時に2通話分の通話路を確保できます。
つまり、アナログ回線2本分に相当します。
電話加入権がアナログ回線の半分ですむ
電話回線ごとに必要となる電話加入権の費用ですが、アナログ回線なら2回線分が必要になります。
- 39,600円(税抜 36,000円) × 2本 = 79,200円(税抜 72,000円)
一方、INS64回線であれば、1回線分の電話加入権だけで済みます。
- 39,600円(税抜 36,000円)
アナログ回線の半分で済みましたね。
ただ、現在は電話加入権を新規で入手することなんて、ほとんどありません。
たいていは電話加入権の取扱業者から、格安で入手することのほうが多いです。
月額基本料金も、アナログ回線2本に比べると安い
NTT | 3級局 | 2級局 | 1級局 | |
事務用 | プッシュ回線 | 2,750円
(税抜 2,500円) |
2,640円
(税抜 2,400円) |
|
ダイヤル回線 | 2,750円
(税抜 2,500円) |
2,585円
(税抜 2,350円) |
2,530円
(税抜 2,300円) |
|
INS64回線 | 3,883円
(税抜 3,530円) |
|||
住宅用 | プッシュ回線 | 1,870円
(税抜 1,700円) |
1,760円
(税抜 1,600円) |
|
ダイヤル回線 | 1,870円
(税抜 1,700円) |
1,705円
(税抜 1,550円) |
1,595円
(税抜 1,450円) |
|
INS64回線 | 3,058円
(税抜 2,780円) |
- 3級局(40万加入以上~)
- 2級局(5万加入~40万加入未満)
- 1級局(~5万加入未満)
- 上記料金以外に1番号ごとにユニバーサルサービス料3.3円(税抜 3円)が必要
DSU(網終端装置)が必要
INS64回線には、1回線ごとにDSU(Digital Service Unit:網終端装置)が必要になります。
INS64回線は、局(NTT)からのクロック信号(網同期信号)を受信することによって、常時通信可能な状態に保つ必要があります。
このクロック信号で同期をとることにより、アナログ回線よりも品質の高い通信が実現されているのです。
INS64回線を接続する機器に応じて、様々な形のDSUが存在しています。
外部DSU
通常、外部DSU(網終端装置)は1回線ごとに単体で接続します。
外部DSU(網終端装置)のLINEポートにINS64回線を接続し、TEポートに目的の機器類(ビジネスフォン、PBXなど)を接続します。
外部DSUはビジネスフォンやPBXの付近に並べて設置されることが多いです。
内蔵DSU
DSUを内蔵している機器の代表的なものにTA(ターミナルアダプタ)があります。
TA(ターミナルアダプタ)はINS64回線をアナログ信号に変換して、アナログ回線としての使用を可能にする機器です。
TA(ターミナルアダプタ)のように、DSUがすでに内部に組み込まれている製品も多いことから、そもそも「DSU」という機器の存在を知らない人も多いんじゃないでしょうか。
TAの他にも、ビジネスフォンやPBXのパッケージにDSUが内蔵されているケースも多々あります。
P-MP接続とP-P接続
INS64回線には、P-MP接続 と P-P接続 の2種類の契約形態があります。
P-MP接続
P-MP接続は「Point to MultiPoint」(ポイント・ツー・マルチポイント)の略です。
INS64回線を接続したDSUから、バス配線で接続することにより、最大8台までのISDN対応の機器を接続して使用することが可能です。
ISDN対応の機器の種類
- G4FAX
- ISDN専用電話機
- ISDN対応ルータ
- TA(ターミナルアダプタ)
- ビジネスフォン
- PBX
バス配線で接続された端末からは、どの端末からでもINS64回線を利用することが可能となっています。
ただし、最大同時通話数は2通話までとなっており、早いもの勝ちとなっています。
バス配線でISDN対応機器を接続するには、ISDN対応機器に2つ以上のTEポート(IN と OUT)の差し込み口が必要になります。
差し込み口の形状は、LANケーブルの先端のコネクタと同じ形状(RJ45・8極8心のコネクタ)のものが挿せるようになっています。
INS64回線の契約時に、特に何も指定しない限り、通常は「P-MP接続」で契約されます。
P-P接続
P-P接続は「Point to Point」(ポイント・ツー・ポイント)の略です。
INS64回線を接続したDSUに対して、1つのISDN対応機器を接続します。
P-MP接続のように、バス配線という概念がないので、複数のISDN対応機器を接続して使用することはできません。
基本的にビジネスフォン・PBXで、P-P接続の指定がある場合を除いては、この契約をすることはほとんどありません。
ちなみにINS1500回線は、P-P接続しかサポートしていません。
すぐに発信したい場合は、電話番号の最後に「#」
INS64回線はアナログ回線と違い、受話器を上げて電話番号をダイヤルしてから、数秒程度の待機時間があります。
そのため、電話番号をダイヤルしただけでは、なかなか発信動作を行いません。
アナログ回線でダイヤルした場合
アナログ回線を使用して電話をする場合は、受話器を上げてから電話番号をダイヤルすると、網側に対して逐一番号を送出します。
INS64回線でダイヤルした場合
INS64回線を使用してダイヤルする場合は、受話器を上げてからダイヤルした情報を、逐一送出することはありません。
INS64回線では、すべてのダイヤルが終わったあとで、一定の待機時間が経過してから、全てのダイヤル情報網側に送出します。
この待機時間(ダイヤル待ち時間)をスキップして、すぐに発信動作を行いたいときは、電話番号をダイヤルしたあとで、最後に「#」をダイヤルします。
「#」をダイヤルすると、ダイヤル待ち時間を省略して、すぐに発信動作に移行するので、INS64回線で電話をかけるときは、最後に「#」をダイヤルする、という風に覚えておくとよいでしょう。
擬似トーン
ビジネスフォンの内線電話機の受話器を上げて、0発信などの外線発信操作を行って、電話回線を使用すると、受話器から「ツー」という発信音が聞こえます。
アナログ回線の場合は、局側から「ツー」音を送出
使用する電話回線がアナログ回線の場合、この「ツー」という音は、局側から送出されます。
この音は「発信音」もしくは「ダイヤルトーン」と呼ばれます。
INS64回線の場合は、ISDN対応機器が「ツー」音を送出
INS64回線は、最初に申し上げたとおり、デジタル回線なので、「ツー」音は実際には、電話回線上に存在しません。
INS64回線の場合は、接続しているISDN対応の機器自体が、擬似的に「ツー」音を送出しています。
通称「疑似トーン」といいます。
疑似トーンを作り出すISDN対応機器
- ビジネスフォン主装置
- PBX(電話交換機)
- TA(ターミナルアダプタ)
- ISDN専用電話機
サブアドレス
INS64回線には、様々な付加サービスが提供されていますが、その中の1つに「サブアドレス」というサービスがあります。
INS64回線や携帯電話などから、INS64回線へ電話をするときに、サブアドレスを付加してダイヤルすることにより、そのサブアドレスに応じた端末を直接呼び出すことができます。
サブアドレスを付加してのダイヤル操作
- 「電話番号」+「*」+「サブアドレス(内線番号)」
INS64回線の公衆電話でのダイヤル操作
- 「電話番号」+「サブアドレスボタン」+「サブアドレス(内線番号)」+「スタート」
サブアドレスで内線番号を指定して、直接呼び出せる
社内連絡用などで、このサブアドレスを上手に利用すれば、社内の特定の内線電話機を直接呼び出すことが可能なので、取り次ぎが不要になり、業務効率が上がります。
サブアドレスはINS64回線に実装されている基本的な機能の1つなので、別途利用料金が発生するということはありません。
発信者番号通知
INS64回線で、iナンバー や ダイヤルイン などのサービスを契約すると、複数の電話番号を利用することになります。
同じiナンバー内、もしくはダイヤルイン内に含まれる電話番号のであれば、どの電話番号でも相手に通知させることができます。
ビジネスフォン・PBXの場合
ビジネスフォン・PBXに、INS64回線を収容している場合は、ビジネスフォン・PBXのデータを設定をすることで、次のように相手に通知したい番号を選択することができます。
- 内線電話機ごと
- 仮想内線(ダミー内線)ごと
- 電話回線ごと
TA(ターミナルアダプタ)の場合
TA(ターミナルアダプタ)を経由して、電話機やFAXを接続する場合は、次のように相手に通知したい番号を設定することができます。
- TA(ターミナルアダプタ)のアナログポートごと(TEL1、TEL2、TEL3など)
G4FAXなどのISDN専用端末の場合
DSUを経由して、G4FAXなどのISDN専用端末を接続する場合は、次のように相手に通知したい番号を設定することができます。
- ISDN専用端末に、相手に通知する電話番号を設定
着信番号通知
INS64回線は、着信時に相手の番号を表示させることができます。
アナログ回線の場合だと、別途ナンバーディスプレイサービスを契約する必要があります。
一方、INS64回線の場合、別途ナンバーディスプレイ契約をしなくても、相手の番号を自動的に通知してくれます。
番号通知されないケースがある
INS64回線でも、次のように番号が通知されないケースもあります。
- 「非通知」の表示は出ない
- 「通知不可」の表示は出ない
- 相手がアナログ回線の場合は、番号は出ない
上記のような着信時にも、通知を受けたい場合は、ナンバーディスプレイの契約が必要となります。
iナンバーで最大3番号まで取得可能
INS64回線には、「iナンバー」というサービスあります。
INS64回線はふつうに1回線契約すると、1つの電話番号、2本同時通話が可能です。
iナンバー契約をすると、1回線の契約で、2本同時通話については変わりませんが、最大で3つの電話番号を取得することが可能となります。
iナンバーの月額料金
電話番号数 | iナンバー使用料の月額料金(税込) |
2番号 | 330円
(税抜価格 300円) |
3番号 | 440円
(税抜価格 400円) |
最大3つの電話番号を有効活用
最大3つの電話番号を取得することで、1本のINS64回線だけでも、次のように有効活用ができます。
電話番号 | 用途 | 備考 |
xx-xxxx-1111 | 代表番号 | iナンバー1 |
xx-xxxx-2222 | FAX番号 | iナンバー2 |
xx-xxxx-3333 | 社内連絡用 | iナンバー3 |
詳しくは次のページを参照してください。
代表ダイヤルインで効率的に利用
INS64回線を複数本契約して、複数の電話番号を取得して利用したい場合には、代表ダイヤルイン契約することをおすすめします。
代表ダイヤルインでは、複数本のINS64回線を、1つのダイヤルイン群としてグループ化することで、電話回線の利用効率を高めることができます。
物理的な電話回線を増減することなく、電話番号の数の増減を調整できるので、月額の基本料金や工事費用面でも経済的といえるでしょう。
詳しくは次のページを参照してください。
最後に
INS64回線はISDN回線の一種で、デジタル信号で通信を行うデジタル回線です。
現在はひかり電話などのIP電話が主流になりつつありますが、まだまだ多くの会社で利用されています。
ネット回線が必要ない環境で電話だけ欲しい場合は、INS64回線は手頃な電話回線といえるでしょう。
最後までご覧いただきまして、ありがとうございます。