停電対応電話機とは、ビジネスフォン主装置・PBXが、停電などで電源が落ちた時に、電話回線を直結して使用できる専用電話機のことです。
ビジネスフォン・PBXがシステムダウン!
ビジネスフォン・PBXにはバッテリーが搭載されており、一時的な停電 (落雷等が原因) や、電源を抜き差しをしただけでは、システムダウンしないようになっています。
しかし次のようなケースではどうでしょうか?
- バッテリー容量を超えた、長時間の停電が発生したとき
- ビジネスフォン・PBXが故障して、システムダウンしたとき
ビジネスフォン・PBXがシステムダウンした場合は、内線が一切使用できなくなります。
内線が使えなくなると、外線を使っての発信・着信も当然できません。
一時しのぎとして、携帯電話やメールで代用できるかもしれませんが、上記のような状況が絶対に許されない場所ではどうでしょうか?
- 病院
- 消防署
- 警察署
- 役所
- コールセンター
- その他の重要施設
対策を立てなければいけませんね。
停電対応電話機は、ビジネスフォン・PBXのシステムダウン対策のひとつ
絶対にビジネスフォン・PBXを落とすことが許されない場合は、次のような対策がなされることが多いです。
ビジネスフォン・PBXの電源は、無停電の発電機回路に接続する
建物内に発電機設備がある場合は、停電になっても自動的に発電機からの供給に切り替わる、無停電の発電機回路にビジネスフォン・PBXを接続します。
PBXのシステムを二重化にする
PBXの重要な部分を二重化しておくことで、片側の系統が故障しても、自動的にもう片側の系統で動作が継続されるので、滅多なことではシステムダウンしなくなります。
どちらか片方でも動作していれば、その間に故障対応ができます。
長時間対応のバッテリーを実装させる
落雷や計画的な停電時でも、長時間対応のバッテリーを実装させておけば、通常時と変わらずに運用が可能になります。
ビジネスフォン・PBXの付属設備には、UPSやリチウムイオン蓄電池を接続する
ビジネスフォン・PBXは、もともとバッテリーを実装させることができるようになっているので、停電になっても動作します。
しかし、次のような付属設備には基本的にはバッテリーが実装されていないため、停電になると使用できなくなってしまいます。
- ONU
- スイッチングHUB
- VOIPゲートウェイ
- ルータ
ひかり電話 や KDDI光ダイレクト などのIP電話サービスの普及がすすんでいる現在では、上記のような機器も、合わせて設置されるている状況が増えています。
これらの機器を停電時でも使用するためには、UPS や リチウムイオン蓄電池 などを別途接続しなければなりません。
UPS
リチウムイオン蓄電池
ビジネスフォン・PBXに収容している電話回線に対して、停電対応電話機を接続しておく
電話回線に直結できる停電対応電話機を接続していれば、万が一、ビジネスフォン・PBXが使えなくなってしまっても、停電対応電話機だけは、外線として使用することが可能です。
というわけで、これらの対策のひとつとして、停電対応電話機があるのです。
停電対応電話機は多機能電話機と見た目はほぼ同じ
停電対応電話機は、通常運用時は普通の多機能電話機として動作します。
ビジネスフォン・PBXがダウンしたときは、電話回線 (局線) を停電対応電話機に直結して、普通の電話機として使用します。
ほとんどのビジネスフォン・PBXには、装置の電源が落ちた時に、電話回線 (局線) を自動的に停電用回路に切り替える機能が備わっています。
この停電用回路からの線を、停電対応電話機に接続しておくことで、電源が落ちたときに、自動的に停電対応電話機に電話回線 (局線) が直結する形になり、一般電話機として使用することができます。
停電対応電話機には、アナログ回線用と、INS64回線用の2種類が用意されており、ビジネスフォン・PBXに収容している電話回線 (局線) の種類に応じた停電対応電話機を接続することになります。
アナログ回線の停電対応電話機への接続例
アナログ回線パッケージの停電用回路からの2芯の線を、停電多機能電話機に接続します。
停電時になると、アナログ回線がアナログ回線パッケージ内で、停電用回路と直結状態に自動的に切り替わり、停電対応電話機へと接続されます。
バス配線用の多機能内線パッケージに接続された、停電対応電話機での接続例です。
基本的には、前の例と同様の動作になります。
アナログ回線を停電用パッケージを経由させてから、アナログ回線パッケージに収容します。
停電用パッケージの停電回路からの2芯の線を、停電対応電話機に接続します。
多機能内線パッケージからは、2芯のうち1芯のみを停電用パッケージを経由させて、停電対応電話機に接続します。
残りの1芯は停電対応電話機に普通に接続します。
停電時になると、アナログ回線が停電用パッケージの停電用回路に、自動的に直結されて、停電対応電話機へと接続されます。
アナログ回線を停電用BOXを経由させてから、アナログ回線パッケージに収容します。
停電用BOXの停電回路からの2芯の線を、停電対応電話機に接続します。
多機能内線パッケージからは、停電用BOXを経由させて、停電対応電話機に接続します。
停電時になると、アナログ回線が停電用BOXの停電用回路に、自動的に直結されて、停電対応電話機へと接続されます。
INS64回線の停電対応電話機への接続例
INS64回線パッケージの停電用回路からの2芯の線を、停電多機能電話機に接続します。
停電時になると、INS64回線がINS64回線パッケージ内で、停電用回路と直結状態に自動的に切り替わり、停電対応電話機へと接続されます。
バス配線用の多機能内線パッケージに接続された、停電対応電話機での接続例です。
基本的には、前の例と同様の動作になります。
INS64回線パッケージの停電用回路から、4芯の線で停電対応電話機に接続します。
この接続の場合、停電対応電話機には、常にT点としてINS64回線が接続されることになります。
多機能内線パッケージからの給電がストップした時点で、停電対応電話機側で内線から直通へと切り替わります。
INS64回線を外部DSUに接続後、INS64回線パッケージと停電対応電話機の2箇所に分岐して接続します。
この接続の場合、前の例と同様、停電対応電話機には、常にT点としてINS64回線が接続されることになります。
多機能内線パッケージからの給電がストップした時点で、停電対応電話機側で内線から直通へと切り替わります。
INS64回線を停電用BOXを経由させてから、INS64回線パッケージに収容します。
停電用BOXの停電回路からの2芯の線を、停電対応電話機に接続します。
多機能内線パッケージからは、停電用BOXを経由させてから、停電対応電話機に接続します。
停電時になると、アナログ回線が停電用BOXの停電用回路に、自動的に直結されて、停電対応電話機へと接続されます。
ビジネスフォン・PBXに収容している電話回線 (局線) に対応した、停電対応電話機を組み合わせることが大事
停電対応電話機は、ビジネスフォン・PBXに収容している電話回線 (局線) に対応したものを接続しなければなりません。
停電電話機と電話回線 (局線) の組み合わせの注意点
停電対応電話機と電話回線 (局線) の組み合わせには、次のような注意点があります。
ひかり電話、光ダイレクトなどのIP電話サービスは、停電になると、ビジネスフォン・PBXよりも先に使えなくなるので、停電対応電話機を接続する意味がほとんどありません。
INS1500回線などの光ファイバーを利用した回線に対応している停電対応電話機は、残念ながらありません。
停電対応電話機の代わりに、ビジネスフォン・PBXから、INS1500回線のDSUの電源を供給するような接続をします。
停電になったとしても、バッテリーで動作し続けるビジネスフォン・PBXから、電源の供給を受けることができるため、通常時と同じようにINS1500回線が利用できます。
INS64回線をTA (ターミナルアダプタ) 経由で、ビジネスフォン・PBXに収容している場合は、ビジネスフォン・PBXよりも先に、TA (ターミナルアダプタ) が使えなくなるので、停電対応電話機を接続する意味がほとんどありません。
最後に
ひかり電話、KDDI光ダイレクトなどのIP電話サービスの普及が進むにつれて、ビジネスフォン・PBXの停電対策も、昔ほどには重要視されなくなってきています。(携帯電話やメール、SNSなどもありますしね)
しかし、絶対に電話回線を止めるわけにはいかないケースもあるのです。
その時の選択肢の一つとして、この停電対応電話機があるわけです。
備えあれば憂いなし。
最後までご覧頂きましてありがとうございます。