専用線使ってますか?
ここでいう専用線とは、
- 拠点間の内線通話のために使う専用線
のことを指します。
今回は、
- 専用線の導入を検討している
- 専用線をすでに使っているが、どうも使い勝手が悪い
- ビジネスフォン・PBX更新と同時に専用線の見直しも検討している
- 単純に専用線がどんなものか知りたい
といった方向けの内容となっています。
それでは専用線について順番に説明していきましょう。
専用線が使われる場面とは?
- 専用線が実際に使われるシーン
- 導入したら便利であろうシーン
は次の通りです。
専用線の利用シーン
- 複数の拠点がある
- 拠点ごとにビジネスフォン・PBXを設置している
- 拠点間で電話連絡することが多い
- 拠点間の内線に直接電話をかけたい
- 拠点間の通話は普通の外線を使っているから通話料金がかかってしまう
- 各拠点への外線着信を専用線経由で本社に集約したい
専用線は上記のようなシーンにおいて、
- 業務の効率化
- 通信コストの削減
に多いに役に立つんですよ。
専用線のインターフェースの種類は?
拠点間のビジネスフォン・PBXを接続するための専用線インターフェースには次のような種類があります。
専用線インターフェースの種類
- OD
- LD
- RD
- TTC2M
- PRI
- BRI
- H.323
- SIP
OD
ODは、
- アナログ信号を圧縮して通信を行う
古くからあるアナログ専用線インターフェースです。
ODは市外専用線とも呼ばれており、
- 遠方への接続で使われることが多い
ですね。
昔はインバンドリンガと呼ばれる増幅装置が別途取り付けられることが多かったのですが、今では見かけることはほぼありません。
OD専用線は1通話につき、
- 制御用で2W
- 音声通話用で4W
の合計6Wの電話線(メタル線)を使用します。
LD
LDは
- アナログ信号で通信を行う
古くからあるアナログ専用線インターフェースです。
LDは市内専用線とも呼ばれ、
- 同じ市内にあるような近くの拠点を結ぶ
ためによく利用されています。
LD専用線は1通話につき、
- 制御 兼 音声通話用で2W
の電話線(メタル線)を使用します。
RD
RDは、
- アナログ信号で通信を行う
古くからあるアナログ専用線インタフェースです。
RDは、ODやLDのように相手先の番号をダイヤルするのではなく、
- 受話器を上げるだけで相手先を呼び出すホットラインのような使い方
をします。
今ではほとんど使われることはありません。
RD専用線は1通話につき、
- 制御兼音声通話用で2W
の電話線(メタル線)を使用します。
TTC2M
TTC2Mは、
- OD専用線をデジタル化して時分割多重化
した専用線インターフェースです。
1通話あたり、
- 64kbpsの音声通信を30本多重化
することから、
- 2M系専用線
と呼ばれることもあります。
TTC2M専用線は1回線につき
- 制御兼音声通話用で4W
の電話線(メタル線)を使用。
同時通話は、
- 最大30通話まで可能
となっています。
PRI
PRIは、ODやLDよりは新しいものの、比較的古くからある専用線インターフェースです。
- INS1500回線の専用線バージョン
といったところでしょうか。
PRIはデジタル信号で通信を行うため、ODやLDなどのアナログ信号の専用線に比べて何かと使い勝手がいいんですよね。
PRI専用線は、
- 通話用のBチャネルが23ch
- 制御用のDチャネルが1ch
の構成となっており、
- 1回線だけで、同時23通話までOK
なんですよ。
- Bチャネルは64kpbs/1ch
- Dチャネルは64kbps/1ch
の通信速度となっていて、合計すると約1.5Mbpsの通信速度となることから
- 1.5M系専用線
と呼ばれることもあります。
物理的な接続としては
- 4Wの電話線(メタル線)
を使用します。
BRI
BRIは、PRIと同じく
- デジタル信号で通信を行う
専用線インターフェースです。
こちらは
- INS64回線の専用線バージョン
といったところでしょうか。
BRI専用線は、
- 通話用(Bch)が2ch
- 制御用(Dch)が1ch
の構成となっていて、
- 1回線で同時2通話
まで可能です。
物理的な接続としては、
- 4Wの電話線(メタル線)
を使用します。
H.323
IPネットワーク上で、
- H.323プロトコルを使用して通信を行う
タイプの専用線インターフェースです。
ネットワークに直接接続するので、使用するケーブルは
- 電話線(メタル線)ではなくLANケーブル
となります。
SIP
IPネットワーク上で、
- SIPプロトコルを使用して通信を行う
タイプの専用線インターフェースです。
SIPプロトコルは、
- H.323の後継ともいえるプロトコル
となっており、多くのIP電話サービスのプロトコルとして採用されています。
ひかり電話もSIPプロトコルで動いているんですよ。
SIPもH.323と同様、ネットワークに直接接続するので、
- 電話線(メタル線)ではなくLANケーブル
を使用します。
専用線の通信バックボーンは?
ひと昔前の専用線の通信バックボーンといえば、
- 「専用線サービス」と呼ばれるメタル線による通信回線
が主流でした。
しかし、光回線などのブロードバンド回線が普及してからは、
- インターネット
- 独自の閉域網
などのIPネットワークへとシフトしています。
専用線インターフェース | 通信バックボーン |
OD |
|
LD |
|
RD |
|
TTC2M |
|
PRI |
|
BRI |
|
H.323 |
|
SIP |
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専用線インターフェースの実際の接続イメージ
ビジネスフォン・PBXのパッケージ |
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VOIPゲートウェイ |
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通信バックボーン |
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ビジネスフォン・PBXのパッケージ |
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VOIPゲートウェイ |
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通信バックボーン |
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ビジネスフォン・PBXのパッケージ |
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VOIPゲートウェイ |
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通信バックボーン |
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ビジネスフォン・PBXのパッケージ |
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VOIPゲートウェイ |
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通信バックボーン |
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ビジネスフォン・PBXのパッケージ |
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VOIPゲートウェイ |
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通信バックボーン |
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ビジネスフォン・PBXのパッケージ |
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VOIPゲートウェイ |
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通信バックボーン |
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ビジネスフォン・PBXのパッケージ |
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VOIPゲートウェイ |
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通信バックボーン |
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ビジネスフォン・PBXのパッケージ |
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VOIPゲートウェイ |
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通信バックボーン |
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専用線ごとの通話品質は?
専用線にはいろいろな種類があります。
では、専用線ごとの通話品質はどうなのでしょうか?
カンタンにまとめると次のとおりです。
専用線 | 通話品質 |
OD | △ |
LD | △ |
RD | △ |
TTC2M | ○ |
PRI | ○ |
BRI | ○ |
H.323 | ◎ |
SIP | ◎ |
OD、LD、RDの通話品質
OD、LD、RDは、
- アナログ信号で音声通話を行うので、通話品質にムラが出る
ことがあります。
特に
- 複数の拠点をリレー中継するような設計
になっていると、通話した時に
- 音声が小さくて聞き取りにくくなる
ようなケースもありますね。
また中継がなかったとしても、VOIPゲートウェイなどの機器でアナログ-デジタル変換が行われるため、そのときに発生する通話ロスも少なからず影響することがあります。
このような場合、
- ビジネスフォン・PBXのPAD調整
- VOIPゲートウェイ側の調整
により、通話品質はある程度までは改善することは可能です。
しかし、これらの調整だけでは不十分なケースがあることも否めません。
TTC2M、PRI、BRIの通話品質
TTC2M、PRI、BRIはデジタル信号で通信を行うため、音声通話の品質がアナログ信号にくらべて安定しています。
OD、LDのように複数の拠点を経由したとしても、TTC2M、PRI、BRIなら音声の劣化もほとんどありません。
デジタル信号の範囲が多い分だけ、通話品質も安定しやすい、ということなんですね。
H.323、SIPの通話品質
H.323、SIPはIPネットワークに直接接続して通信を行うため、他の専用線インターフェースに比べてデータ-音声の変換が最も少なくて済みます。
ネットワークの通信帯域さえしっかりと確保されていれば、他の専用線インターフェースよりも通話品質は安定しやすいといえるでしょう。
発信者番号の通知はできる?
別の拠点の内線を呼び出した時に、こちらの番号を通知できるのかどうか。
それは専用線のインターフェースの種類によって異なります。
かんたんにまとめると次のとおりです。
専用線 | 発信者番号通知 |
OD | × |
LD | × |
RD | × |
TTC2M | × |
PRI | ○ |
BRI | ○ |
H.323 | ○ |
SIP | ○ |
OD、LD、RD、TTC2Mでは番号通知できない
OD、LD、RD、TTC2Mは個別線信号方式を採用しているため、発信者番号を通知することはできません。
個別線信号方式とは、
- 制御信号と音声信号を同一の通信回線を使って行う信号方式
のことです。
個別線信号方式では、発信者番号を通知するための情報を送受信するような器用なことはできないんですね。
残念。
PRI、BRIは番号通知できる
PRI、BRIはデジタル信号内で
- 音声用のBチャネル
- 制御用のDチャネル
がしっかりと分かれています。
制御用のDチャネルではさまざまな制御が可能となっており、発信者番号通知もその制御の中に含まれているため、番号通知が可能なんですね。
さすがデジタル、番号通知できてよかった。
H.323、SIPも番号通知できる
H.323、SIPはIPネットワークに直接つながるため、発信者番号情報を通知するなんてお手のものです。
なんせ最新の専用線技術ですからね。
今後の主流となる専用線インターフェースは?
今後主流となる、あるいは残り続けるであろう専用線インターフェースについて説明します。
専用線 | 今後主流となるのは? |
OD | △ |
LD | △ |
RD | △ |
TTC2M | △ |
PRI | △ |
BRI | △ |
H.323 | ○ |
SIP | ◎ |
OD、LD、RD、TTC2Mは「消極的な」選択肢として残るだけ
OD、LD、RD、TTC2Mなどの専用線は、古くからあるインターフェースとして、多くのビジネスフォン・PBXで使用されてきました。
しかし、H.323やSIPなどを使った新しい専用線に比べると、今となっては機能的な部分やコスト面でどうしても見劣りしてしまいます。
だからといって、
H.323やSIPのような新しいインターフェースを導入したい!
となっても、古いPBXやビジネスフォンでは対応していないため、導入できません。
そうなってくると、古いPBXやビジネスフォンでも対応しているOD、LD、RD、TTC2Mの中から、いずれかのインターフェースを選択するしかないんですよね。
また、
ビジネスフォン・PBXを新しく更新する予定だけど、既存のVOIPゲートウェイはそのまま流用したい!
というケースもありますよね。
その場合はビジネスフォン・PBX側に同じ専用線インターフェースのパッケージを実装せざるを得ません。
そんな感じで、OD、LD、RD、TTC2Mに関しては、
- 既存設備を考慮した「消極的な」選択肢として残り続ける
ということになるでしょう。
PRI、BRIも「消極的」な選択肢として残るだけ
PRI、BRIは専用線インターフェースとしては、OD、LD、RD、TTC2Mよりは新しく、発信者番号の通知もできることから、専用線としての使い勝手は悪くありません。
ではどこが「消極的」な選択肢なりうるのかというと、それはずばり「価格の高さ」です。
ビジネスフォン・PBXに実装するPRI、BRIのパッケージ(基板)は、他のパッケージに比べるととても高価なんです。
ビジネスフォン・PBXの更新時にパッケージ(基板)やVOIPゲートウェイの流用ができるのであれば、引き続き同じ構成で利用し続けるのもありかもしれません。
しかし、
- 新たにPRI、BRIインターフェースも購入しなければならない
- あるいはVOIPゲートウェイも新設しなければならない
というような場合は、H.323やSIPインターフェースでの導入をおすすめします。
そのほうが導入コストも安く、拡張性にも優れているからです。
専用線はH.323、SIPにシフトチェンジ
H.323やSIPインターフェースは、
- インターネットVPN
- IP-VPN
などのIPネットワークに、直接LANケーブルを接続して乗り入れます。
そのおかげで、他の専用線インターフェースでは別途必要となっていたVOIPゲートウェイがいりません。
ビジネスフォン・PBXがVOIPゲートウェイを内蔵するイメージですね。
H.323よりもSIPが主流
IPネットワーク上に直接LANケーブルを接続するインターフェースが出始めた頃は、H.323しかありませんでした。
しかし現在ではH.323の後継ともいえる規格のSIPプロトコルが主流となっています。
- ひかり電話や他のIP電話サービス
- ビジネスフォン・PBXで使うIP多機能電話機やSIP電話機(スマホ含む)
これらも実はSIPプロトコルで動いているんですよ。
最後に
拠点間のビジネスフォン・PBXを結ぶ専用線。
一昔前はODやLDなどのアナログ専用線が主流でしたが、現在ではIPネットワークを活かした形でのH.323やSIP専用線へのシフトが進んでいます。
というか専用線という呼び方自体がもう古いのかもしれません。
ビジネスフォン・PBX自体のIP化もどんどん進んでます。
専用線インターフェースを使わずとも、IP-VPNやインターネットVPNに乗せるだけで拠点間の内線通話ができる機種もすでに登場しています。
専用線の新たな導入、あるいはビジネスフォン・PBXの更新を含めた抜本的な見直しを考えてらっしゃるのでしたら、是非お気軽に問い合わせしてみて下さいね。
最後までご覧いただきまして、ありがとうございます。