ACDは「Automatic Call Distribution」の略で、外線の着信を公平に分配する機能のことです。
ビジネスフォン・PBXに収容している電話回線と内線電話機をACDグループ登録することでACDグループ内の外線着信を公平に分配します。
ACDは電話受付をメインとする業務に特化した機能
ACDは電話回線の着信を大量に受ける業務に向いている機能です。中でもコールセンターでは欠かすことのできない定番といってもいい機能です。
外線着信を自動的に内線電話機ごとに割り振ってくれる
ACD機能を使わない一般的なオフィスでの外線着信
- 外線着信する
- 複数の多機能電話機に割り振られた外線ボタンが着信鳴動する
- だれかが外線ボタンを押して着信に応答する
着信時に誰が応答するか基本的には早いもの勝ちです。
また電話をよく取る人、電話をあまり取らない人というふうにも分かれるので電話受付をメインとする業務を行うための公平性には少し疑問が残ります。
ACD機能を使ったコールセンターなどでの外線着信
- 外線着信する
- ACD機能によって自動振り分けされた外線着信が内線電話機1台に直接着信する
- 外線着信した内線電話機が受話器を上げて応答する
ACD機能を利用すると外線着信は内線電話機ごとに自動的に振り分けらます。
ACD-MIS機能をインストールしたパソコンでACD着信の状況を集計すればオペレータの電話対応の回数や時間なども管理できるのでオペレータごとの業務成果として残ることになります。
ACD機能においての電話回線の着信を公平に分配するための基準
電話の受付を行うオペレータの待機時間
ACDでは基本的に内線電話機の待機時間が長い電話機から優先的に外線着信します。
待機時間に応じたACD着信の動作例
- 内線2000 (待機時間1分)
- 内線2001 (通話中)
- 内線2002 (待機時間2分)
- 内線2003 (待機時間3分)
この状態で外線着信すると次に着信鳴動するのは一番待機時間の長い内線2003(待機時間3分)になります。
オペレータごとのスキルに応じて着信(スキルベースルーティング)
ACD業務を行うオペレータのスキルに応じて外線着信を行います。
- 内線2000 (スキルレベル1)【1番高い】
- 内線2001 (スキルレベル2)
- 内線2002 (スキルレベル3)
- 内線2003 (スキルレベル4)
この状態で外線着信すると優先的に着信鳴動するのは内線2000(スキルレベル1)になります。
基本的には待機時間とスキルに応じて着信
待機時間とオペレータのスキルの両方に応じて外線着信を行います。
- 内線2000 (スキルレベル1、待機時間2分)
- 内線2001 (スキルレベル1、待機時間4分)
- 内線2002 (スキルレベル3、待機時間5分)
- 内線2003 (スキルレベル2、待機時間1分)
- 内線2004 (スキルレベル3、待機時間6分)
- 内線2005 (スキルレベル2、待機時間10分)
この場合外線着信の優先順位は次のようになります。
- 内線2001 (スキルレベル1、待機時間4分)
- 内線2000 (スキルレベル1、待機時間2分)
- 内線2005 (スキルレベル2、待機時間10分)
- 内線2003 (スキルレベル2、待機時間1分)
- 内線2004 (スキルレベル3、待機時間6分)
- 内線2002 (スキルレベル3、待機時間5分)
まずはオペレータごとのスキルを優先(レベル1が最優先)し、次に待機時間を優先します。
スキルレベルが一番高く、そのスキルの中で待機時間が一番長い内線電話機に最優先で外線着信します。
ACDを利用するためには内線電話機からログイン
電話受付オペレーターがACD業務に入るためには内線電話機からログインを行います。
ACDログイン操作例(特番をダイヤルする場合)
- 内線電話機の受話器を上げる
- ACDログインの特番をダイヤル
- オペレータごとに割り振られているログインID(たとえば1234など)をダイヤル
- 受話器を下ろしてログイン完了
ACDログイン操作例(多機能電話機のファンクションキーを押す場合)
- ACDログインのボタンを押す
- オペレータごとに割り振られているIDコード(たとえば1234など)をダイヤル
- ログイン完了
ログインした内線電話機はACD着信の対象となります。
ACDログイン中に一時的に席をはずすときは内線電話機から離席操作
ACDにログインした状態のまま一時的に席をはずす時は内線電話機から離席操作を行いACD着信の対象から外します。
離席モード移行の操作例(特番をダイヤルする場合)
- 内線電話機の受話器を上げる
- 離席開始の特番をダイヤル
- 受話器を下ろして離席モード開始
離席モード移行の操作例(多機能電話機のファンクションキーを押す場合)
- 消灯中の離席モードのボタンを押す
- 離席モードのボタンが赤点灯して離席モード開始
席に戻ってきたときは内線電話機から離席解除の操作を行います。
離席モード解除の操作例(特番をダイヤルする場合)
- 内線電話機の受話器を上げる
- 離席モード解除の特番をダイヤル
- 受話器を下ろしてACD着信の待ち受けを開始する
離席解除の操作例(多機能電話機のファンクションキーを押す場合)
- 赤点灯中の離席モードのボタンを押す
- 離席モードのボタンが消灯してACD着信の待ち受けを開始する
ACD着信での通話終了後の作業を行う時は内線電話機から後処理モードの操作
ACD着信に応答し通話が終了したあとはデータ入力などの後処理作業が発生します。
後処理作業中にすぐにACD着信してしまうと後処理ができませんので内線電話機から後処理モードを設定しACD着信の対象から外します。
後処理モード移行の操作例(特番をダイヤルする場合)
- 内線電話機の受話器を上げる
- 後処理モード移行の特番をダイヤル
- 受話器を下ろして後処理モード開始
後処理モード移行の操作例(多機能電話機のファンクションキーを押す場合)
- 消灯中の後処理モードのボタンを押す
- 後処理モードのボタンが赤点灯して後処理モード開始
後処理作業が終わったら後処理モードを解除してACD着信の待ち受け状態に戻します。
後処理モード解除の操作例(特番をダイヤルする場合)
- 内線電話機の受話器を上げる
- 後処理モード解除の特番をダイヤル
- 受話器を下ろしてACD着信の待ち受けを開始する
後処理モード解除の操作例(多機能電話機のファンクションキーを押す場合)
- 赤点灯中の後処理モードのボタンを押す
- 後処理モードのボタンが消灯してACD着信の待ち受けを開始する
ACD着信がオーバーフローした場合の処理
内線電話機がふさがっている状態でACD着信した場合、つまりオーバーフローした場合のACD着信の処理をビジネスフォン・PBXであらかじめ設定しておきます。
オーバーフローしても何もしない
ACD着信がオーバーフローしても何の処理もしません。
かけてきた相手にはビジートーン(話中音)が送出されるか、あるいは呼びっぱなしの状態になります。
別のACDグループに着信させる
複数のACDグループを運用しているのであれば、別のACDグループに代わりに着信させることができます。
- ACDグループ01がオーバーフローしたらACDグループ02の内線電話機に着信する
別の電話番号に転送する
オーバーフローした着信をあらかじめ登録しておいた別の電話番号に転送させることができます。
- 別の部署の転送受け用の電話番号に転送する
- 別の営業所に専用線経由で転送する
お待たせメッセージを送出する
オーバーフローした着信に一時的にお待たせメッセージを送出して待ち合わせを行います。
内線電話機の空きが出るまでお待たせメッセージを送出し、一定時間を過ぎたら切断する、というような動作になります。
ボイスメールのメールボックスに代行着信する
オーバーフローした着信をボイスメールに代行着信させて応答ガイダンス送出後、かけてきた相手にメッセージを吹き込んでもらいます。
吹きこまれたメッセージはボイスメールのメールボックス内に保存されます。
ACD業務が終了したら内線電話機からログアウト操作
ACDの業務が終了した内線電話機はログアウト操作を行って業務を終了します。
ACDログアウト操作例(特番をダイヤルする場合)
- 内線電話機の受話器を上げる
- ACDログアウトの特番をダイヤル
- 受話器を下ろしてログアウト完了
ACDログアウト操作例(多機能電話機のファンクションキーを押す場合)
- ACDログアウトのボタンを押す
- ログアウト完了
ログアウトした内線電話機はACD着信の対象から外れます。
ACD-MISとビジネスフォン・PBXを接続してモニタリングとデータベース管理
ACD-MIS機能をインストールしたPC(ACDサーバ)をビジネスフォン・PBXに接続することで次のようなことができます。
- ビジネスフォン・PBXからACD業務の状況をリアルタイムに受信してモニタリング
- 受信したデータをデータベース化、データベース管理されたデータは集計出力可能
ACD-MISでモニタリングできる機能
- ACDグループの運用状況
- オペレータの在席状況(ログイン、ログアウト、待機状態、通話状態、後処理、離席、休憩など)
- オペレータごとの対応状況(着信数、応答数、着信時間、通話時間、後処理時間など)
- 外線着信数(着信数、応答数、オーバーフロー数、着信破棄数、平均通話時間、平均着信時間など)
- 発着信履歴
- 日、週、月ごとの各種統計管理
- 統計データのデータベース化
- 最適化のための自動分析等
CTI機能も併用
ACD着信を受ける内線電話機ごとにCTI連動(内線電話機とPCを接続し、データベースと電話機能の連動を行う)を行い、通話は受話器(ハンドセット)の代わりにヘッドセットを利用します。
CTI連動を行うこと次のようなオペレーションが可能になり業務の効率化が図れます。
- 外線着信に応答すると同時に相手の電話番号に応じた顧客情報をパソコンの画面上に自動的にポップアップ表示する
- 通話しながらCTI連動したパソコンに表示された顧客情報のデータを編集する
- パソコン上に通話録音した内容を保存する
最後に
ACD機能にはまだまだ多くの機能があり、ビジネスフォン・PBXの中でも奥の深い機能のひとつといえます。
コールセンターなどの電話受付には絶対にかかせませんね。
最後までご覧いただきましてありがとうございます。